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● かのん鉄道ギャラリー第2章「アーバンライナーnext奮戦記」(2003/11/18) ●

N2000系さんから、前回に続きKEY「kanon」の面々が近鉄アーバンライナーnextの中で繰り広げるSSをいただきました。ありがとうございましたm(_ _)m
これを読んで近鉄の「新しい顔」を体感してみてはいかがでしょうか。ではどうぞ。
※スタイルシートを利用しています。対応ブラウザでどうぞ。

 みなさん、本日は近鉄特急にご乗車くださいましてありがとうございます。
 前作の「かのん鉄道ギャラリー」はいかがでしたか。今回はその第2弾ということで、かのんキャラクターが再び様々な場面で登場します。
 今回は、第1作目の続きということで、2003年3月6日にデビューしたアーバンライナー・ネクストの奮戦記です。前回、アーバンライナーを定刻通りに運転した美坂姉妹。今回は、土曜・休日運用の難波発16:00のノンストップ特急。その折り返し乗務となります。果たして、無事に名古屋へ戻って来れるのか。そして・・・。
 それでは、お待たせしました。「かのん鉄道ギャラリー」第2章の始まりです。最終最後までのお付きあい、どうぞごゆっくりお楽しみください。

 前回の乗務を無事に終えた美坂姉妹。日付が変わって日曜日の昼前、彼女達は近くの喫茶店で昼食をとっていた。今回の運用は、難波発16:00のノンストップ特急だった。休日の16:00。そう、あのアーバンライナー・ネクストだった。デザートのフルーツパフェを食べながら、栞が香里に話しかけた。
 「香里姉さん、今日はあのアーバンライナー・ネクストの運転だよね。しかも、日曜日の16:00。結構客が乗ってきそうだね。」

すると、香里は、
 「そうだね。かなり気合が入りそうだね。」
栞は、フルーツパフェのウェハースを食べながら聞いていた。しかしその直後、香里の表情は険しくなった。
 「実は、ネクストの運転だけど、営業運転はまだ数回しかやっていないから不安だよ。」
 「そういえば、香里姉さんがネクストを運転するところはあまり見たことないけど・・・。大丈夫、栞がフォローするから任せて。」
 「ありがとう、栞。」
香里が不安になるには理由があった。香里がネクストを運転する日になると、その日はたまたま検査であいにく普通のアーバンになってしまったり、栞がネクストを運転する時になると、香里が別運用だったりとめぐり合わせが悪かった。そのため、今回が姉妹で初のネクストの運用になってしまった。アーバンでは息ピッタリの姉妹が、ネクストでは果たして上手くいくのか。時間が近づくにつれて、香里の緊張が高まっていった。
 そんな時だった。栞が香里にある物を渡す。
 「これ、栞がネクストを運転した時のメモなの。とりあえずこれを読んでおけば、何も知らないよりは少しはマシだと思うよ。」
 「ありがとう、栞。」
こうして、2人は点呼の時間まで仮眠を取ることに・・・。しかし香里は、仮眠する前に栞のメモを今までの運転とじっくり照らし合せながら読んでいた。

ここで簡単にアーバンライナー・ネクストを紹介しましょう。アーバンライナー・ネクストは、名阪客の巻き返し用に造られた次世代型ノンストップ専用車であります。新幹線に押されていたわけではなく、堅調だった利用客そのものが減ってしまった為、名阪特急のイメージアップとして誕生したわけです。
運転方式も、15年も経てば随分変わった。まず、ブレーキが22000系から採用している電気指令式になったこと。そして、上下式の2軸式レバー。(例として、西日本の運転台)なお、近鉄特急で過去にワンハンドルマスコンを採用した例は一両もない。そして、VVVFインバーターを採用したことである。でも、アーバンライナーも最初はVVVFを採用する予定だった。しかし、誕生当初はVVVFがまだ高価だったことと、停車駅が少ないため節電が期待できないということで見送られた。車体は鋼製車体で、過去に近鉄特急でアルミやステンレスを採用した例はない。
扉は、アーバンは2枚折戸だったが、ネクストは22000系から採用している気密性のいいスイング式プラグドア(例として、四国の2000系等)である。扉が開くと、乗り降りしやすいよう小さなステップも出てくる。そして、方向幕は近鉄特急初のLEDとなった。
車内は、新たに開発されたゆりかごシートを採用。デラックスシートには、近鉄特急初の電動リクライニングを採用した。更に、22インチ大型ディスプレイや自動販売機、女性客を考慮して心地よい空間を演出しています。そして、近鉄特急初の全席禁煙車となり、喫煙コーナーも初登場となった。そして2003年、栄冠のブルーリボン賞受賞となりました。説明しすぎるときりがないので、彼女たちはどうなったか見てみましょう。

 点呼を無事に終え、引き込み線に停まっていたネクストにいよいよ乗務することとなった。先頭車は三次曲線を使っているためか、スマートなアーバンに比べるとややいかつい感じだ。最初は、東花園から難波までの回送である。前回も東花園に回送したが、なぜと思う方もいるかもしれない。

 アーバンライナー・ネクストは大阪線の高安の所属だが、必ずしも所属の位置に回送するとは限りません。近くの車両所で回送することもしばしばあります。もし、回送が高安限定になると大変なことになります。なぜか。
それは、近鉄の複々線は大阪線2線と奈良線2線が一緒になっているからである。難波へは、奈良線しか行けない為、運用を終えて高安に回送するとなると、鶴橋で大阪線に転線する必要があるからです。ただでさえダイヤがパンク状態なのに、いちいち回送の為にポイントを切り替えると流れを悪くする原因にもなります。そこで、高安に回送しないで、奈良線の東花園まで回送させるわけです。そうすれば、わざわざ切り替える必要がないため、スムーズに回送することができます。
香里は、メモをイメージして試行錯誤でネクストを操る。とりあえず、難波まで回送成功。引込み線で、進入を待っていた。

 一方その頃、難波駅ではあの二人組がいた。そう、佐祐理と舞だ。契約を無事に取った二人は、その後大阪で遊んでいた。
 「やっぱり、仕事の後の大阪遊びはいいよね。食べるものもいっぱい食べたし、気分は最高だよね。」
 すると、舞は、
 「遊ぶのはいいけど、これ担当に知られたら大変なことになるよ。」
 「そんなのは、黙っとけば大丈夫。」
 いつもの佐祐理だが、舞は知られたらどうしようとひやひやしていた。舞は特急券を買いに行こうとした。すると、佐祐理が舞の手を引っ張り、
 「特急券は買わなくても大丈夫よ。」
と、佐祐理は言った。そして、自分の携帯を取り出し、
 「さっきタクシー乗っていたときに、すでに特急券は予約したのよ。もちろん、デラックスシートよ。」
 「もしかして、チケットレスサービス?すごいじゃない。でも、佐祐理の分しか買ってないんじゃないの?」
 「だ〜いじょうぶ。ちゃんと舞の分も予約したよ。」
 すると、佐祐理の手には2台の携帯が。舞は、
 「なんで携帯2台も持っているの?」
と、尋ねた。佐祐理は、
 「右手は、仕事用のドコモ。左手は、プライベート用のFOMAよ。FOMAはまだエリアが狭いから、あえて2台持っているんだよ。」
 そして佐祐理は、FOMAのテレビ電話で遊んでいた。とりあえず、舞は売店で車内用の飲物を買っていた。
 ここで駅についてだが、近鉄難波駅は2面3線のホームである。3番線は片面のみの到着専用ホーム、2番線は奈良線、1番線は特急ホームである。広さは普通だが、大半が2番線の奈良行きの快速急行を並んで待つ客が多い。しかし、それを尻目に特急をゆったりと待つ客も多い。舞は車内用の飲物を買った後、佐祐理と一緒に列車の入線を待っていた。

 一方、鶴橋駅では、ユニバーサルスタジオ・ジャパンで遊び疲れた水瀬一家がいた。行きでは、あんなにはしゃいでいた名雪もそんなに気力は残っていなかった。あゆも初めてのテーマパークでかなりヘトヘトだ。真琴と秋子さんだけがなぜか元気だった。そして袋の中には、名雪が駄々捏ねて買ったでっかいス○ーピーのぬいぐるみが入っていた。もちろん、秋子さんは、
 「名雪、来月からお小遣い少し減らしますからね。」
と、ニコニコしながら言った。名雪は、ス○ーピーは嬉しいが、小遣いが減ることはショックのようだった。
 水瀬一家が、仲良く話をしていたその時。真琴の肩をポンポンと叩く人が・・・。
 なんと天野だった。こんな所で会うとは、まさに偶然だ。天野が真琴に、
 「こんにちは。こんな所で会うとは思ってもいなかったわ。」
 突然の出会いに、真琴も驚いていた。すると、真琴が突然オロオロしだす。そんな時、天野は真琴に声を掛ける。
 「お名前は。」
 この質問で、名雪とあゆは天野が何を考えているのかわからなかった。しかし天野は再び、
 「お名前は。」
と問いただす。何回か質問してようやく、
 「ま、こ、と。真琴なの。いい名前ね。」
と、言った。真琴は嬉しそうに頷いた。そして天野は、真琴の頭を優しく撫でた。その時、秋子さんが天野に問いただす。
 「真琴が喜んだのはいいけれど、自分のきっぷは買ったの?」
 すると、天野は、
 「ええ。デラックスシートが辛うじて残っていて、何とか買えました。私が買った途端に、空席状況に満席の表示が出ました。どうやら、最後の一枚だったようですね。」
 天野は、なんとか自分の席が確保できたらしくホッとしているようだ。入線まであと数分となった。

 難波駅では、かなりの客がネクストの入線を待っていた。もちろん、あの二人もいる。引込み線には、香里が入線の時を待っていた。そして、放送が流れる。
 「まもなく1番線に、16:00発名古屋行き特急、名古屋行きのノンストップ特急が参ります。途中の停車駅は、上本町、鶴橋の順に停まり、鶴橋を出ますと名古屋まで途中の駅には停まりません。列車の番号は、前の方から1号車、2号車の順で、座席は指定となっております。特急券の指定番号の席にお座りください。列車が到着します。白線の内側にお下がり下さい。」
放送が流れた後、信号が切り替わり、香里が、
 「名阪甲特急16列車、1番線入線。」
と言い、マスコンを入れた。タイフォンを鳴らして1番線に入線。入線完了後、栞がドアボックスにキーを差しこみ、扉を開けた。待っていた客が、次々と乗り込む。車内では、テープ放送が流れていた。
 「この列車は、名古屋行きノンストップ特急アーバンライナーでございます。難波を出ますと、上本町、鶴橋の順に停まり、鶴橋を出ますと名古屋まで途中の駅には停まりません。この列車の車内は、喫煙コーナーを除きすべて禁煙となっております。喫煙コーナーは、1号車、3号車の後よりと6号車の前よりです。お手洗いは、2号車と4号車と5号車にあります。カード専用電話は、3号車にございます。カード専用電話は、電波の弱い区間に入ると通話ができなくなります。発車までしばらくお待ちください。」
 テープ放送の後、栞が簡単にアナウンスする。
 「この列車は、名阪ノンストップ特急アーバンライナー・ネクストでございます。途中、上本町、鶴橋の順に停まり、鶴橋を出ますと名古屋まで途中の駅には停まりません。お乗り違いのないようご注意ください。この列車の車内は、喫煙コーナーを除き全席禁煙となっております。発車までしばらくお待ちください。」
 デラックスカーには、佐祐理と舞が座って発車を待っていた。佐祐理はアプリにどっぷりはまっていた。舞は相変らず冷静に周りを見ていた。

 一方、香里は不安そうな様子だった。いくらメモを読んでいても、真価が問われるのはこの後。回送運用はおまけみたいなものだから、いざ回送運用が上手くいっていても実戦で発揮されなければ面目丸潰れだ。
 発車7分前、内線が入る。
 「香里姉さん、落ち着いて。普段どおりにやれば大丈夫。ダイヤはアーバンのままだからゆとりはあるはずだよ。美坂姉妹の実力見せてあげようよ。」
 「栞、わかったわ。香里のプライドを賭けてやってみる。」
 「香里姉さん、そう来なくっちゃ。」
 そんなことを話しているうちに、ホームの放送が流れる。
 「お待たせいたしました。まもなく1番線から、名古屋行き特急、名古屋行きのノンストップ特急が発車いたします。次は、上本町まで停まりません。」
 そして、栞がアナウンスをする。
 「お待たせいたしました。まもなく、名古屋行きノンストップ特急アーバンライナー・ネクストが発車いたします。閉まる扉にご注意ください。次は、上本町に停まります。」
 ドアを閉め、栞が電鈴を鳴らす。そして香里が、
 「戸締めよし、電鈴よし。次、上本町。出発進行。制限30。」
 タイフォンを鳴らし、隣に停まっていた「シリーズ21」車両に見守られてアーバンライナー・ネクストは発車した。ジェット機のようなVVVFインバーター音を唸らせ、ゆっくり奈良線に進入。制限解除後、すぐに日本橋を通過し、上本町に差し掛かる。
 「まもなく、上本町でございます。上本町の次は、鶴橋でございます。」
 テープ放送が流れた後、香里が、
 「場内進行、上本町停車。」
と言ってブレーキを掛ける。ブレーキ音を地下に響かせながら上本町に到着。ホームには近鉄百貨店で買物帰りの客が快速急行や準急を待っていたが、それを尻目に数人の客がネクストに乗り込む。向かいのホームには、近鉄百貨店への大きな入口がある。そして、栞がアナウンスする。
 「この列車は、名古屋行きノンストップ特急アーバンライナー・ネクストでございます。次は鶴橋に停まります。閉まる扉にご注意ください。」
 ドアを閉め、栞が電鈴を鳴らす。そして、香里が、
 「戸締めよし、電鈴よし、次、鶴橋。出発進行。」
 タイフォンを鳴らして、再びVVVFインバーターが唸りだした。地下区間を抜け出し、鶴橋に差し掛かる。
 「まもなく、鶴橋でございます。鶴橋の次は、名古屋まで停まりません。」
 テープ放送が流れた後、香里が帰宅ラッシュで混みはじめた鶴橋駅の客にタイフォンを鳴らす。そして、
 「場内進行、鶴橋停車。」
 大量の客に見守られながら、鶴橋到着。ここで、この列車の最後の客を拾う。大きな鞄を持った客や、USJのおみやげを抱えた客が一気に乗り込む。
 「この列車は、名古屋行きノンストップ特急アーバンライナーでございます。次は、名古屋まで途中の駅には停まりません。お乗り違いのないようご注意ください。発車までしばらくお待ちください。」
 水瀬一家は4号車に、天野は1号車のデラックスカーに乗り込む。自分の席につき、ホッとしているようだ。そして、栞のアナウンスが流れる。
 「この列車は、名古屋行きノンストップ特急アーバンライナー・ネクストでございます。次は、名古屋まで途中の駅には停まりません。お乗り違いのないようご注意ください。まもなく発車いたします。閉まる扉にご注意ください。」
 そして栞が扉を閉め、電鈴を鳴らした。香里が、
 「戸締めよし、電鈴よし。次、名古屋。進路、大阪線信号よし。出発進行。」
 タイフォンを鳴らして、名古屋に向けて約2時間の旅が始まった。鶴橋を出てすぐに大阪線に転線。制限解除後、香里が一気にマスコンを入れた。ジェット機のようなVVVF音を唸らせて、一気にスピードを上げる。車内では、テープ放送が流れる。
 「みなさん、本日は近鉄特急にご乗車くださいましてありがとうございます。この列車は、名古屋行きノンストップ特急アーバンライナーでございます。次は名古屋でございます。続いて、車内のご案内をいたします。
この列車の1号車はデラックスシート車で、特急券の他に特別車両券が必要です。また車内は、喫煙コーナーを除きすべて禁煙となっております。喫煙コーナーは、1号車と3号車の後よりと6号車の前よりです。お手洗いは、2号車と4号車と5号車にあります。カード公衆電話は、3号車にあります。カード専用電話は、電波の弱い区間になりますと赤ランプが点灯して通話ができなくなります。後ほど車内に参ります。ご用の方はお知らせください。」
 そして栞が簡単にアナウンスする。
 「この列車は、名古屋行きノンストップ特急アーバンライナー・ネクストでございます。次は、名古屋でございます。この列車の車内は、喫煙コーナーを除きすべて禁煙になっております。ただ今から、車内に参ります。ご用の方はお知らせください。」
 栞は、精算機を持って移動開始。今日は日曜日のせいか、レギュラーカーもかなり埋まっている。デラックスカーは満席だった。全席禁煙のかいもあって、車内はかなりきれいだ。そして運転室に入っていった。

 一方、香里はネクストのパワーを存分に引き出していた。車内アナウンスをしている間に、今里を通過。通過後、奈良線の下を潜り、アニメイトのある布施を通過。右に大きくカーブし、あっという間に奈良線とお別れする。そしてすぐに俊徳道を通過し、長瀬を通過。今日は流れがいいせいか、スピードを落とさずに走っている。すると、栞が運転室に入ってきた。
 「香里姉さん、調子はどう?」
 「栞、メモにも書いてあったけど、加速が今までと全然違うね。130キロ出す区間は限られるけど、パワーにゆとりはあるはずだから多少遅れても挽回はできると思うよ。」
 どうやら、香里も少しは不安を取り除いたようだ。しかし、まだ始まったばかりなので、何が起こるか最後までわからない。弥刀、久宝寺口を通過し、近鉄八尾を通過。そして、栞が再びアナウンスする。
 「本日は近鉄特急にご乗車くださいましてありがとうございます。お休みのところ恐れ入りますが、ただ今から乗車券の方を拝見させていただきます。お手元にご用意くださいませ。」
 そして、栞がデラックスカーから検札を始めた。今日は、客がかなり乗っているため時間がかかりそうだ。列車は高安を通過し、恩智、法善寺も一気に通過した。この調子なら、行きのようにもたつくことはなさそうである。なんとか無事に済んでほしい。それが香里の願いでもあった。

 さて、水瀬一家はどうなっているだろうか。水瀬一家は、4号車に乗っていた。あゆは初めてのテーマパークで遊び疲れたせいか、秋子さんの膝枕でぐっすり眠っていた。名雪は、前回の居眠り事件で懲りたせいか起きていた。真琴は、普段ならマンガを読むはずが、この日に限ってはおとなしくしていた。名雪は辛うじて起きていたが、眠気がどんどん襲ってくる。そこで、コーヒーをがぶ飲みしていた。秋子さんは、
 「名雪、そんなにコーヒー飲むとお腹壊しますよ。」
 「秋子さん、眠気が襲ってくるからどうしても飲みたくなるの。」
 そう言って、名雪はコーヒーをガンガン飲んだ。しかし秋子さんの読みが当たったせいか、しばらくして名雪の腹がゴロゴロとなりだした。そして、
 「秋子さん、腹が痛いからトイレに行ってきます。」
 「ほーら、言うこと聞かないからそういうことになるのよ。後で薬用意しておきますからね。」
 名雪は、顔色を変えてヨタヨタしながら4号車の女性用トイレに駆け込んでいった。なお、アーバンライナー・ネクストでは、女性用トイレも新たに設置された。

 佐祐理は相変らずだった。佐祐理は、まだアプリに熱中していた。しかし舞は、このデラックスシートに座ったまま考えることが多くなった。デラックスシートをフルリクライニングすると、ゆりかごに近い状態になるため、舞はあの記憶が再び甦りそうだった。なんか嫌な予感がする。あの忌まわしい記憶。そんな時、佐祐理が舞に、
 「舞、さっきから様子が変だけど、どうかしたの?」
すると、舞は、
 「ごめん、佐祐理。なんか昔の記憶が甦りそうなの。せっかく普通の女にもどったのに・・・。」
 「大丈夫よ。私がついているじゃない。」
 「ありがとう、佐祐理。」
 いつもは笑ってばかりいる佐祐理も、この時だけは違っていた。あの時の舞に戻してはいけない。そう思いながら、佐祐理は再びアプリに熱中することに・・・。

 堅下を無事に通過した香里は、徐々に感触をつかんでいた。
 「ようし、この走りならなんとか分岐点まで余裕で走れるね。」
 安堂、河内国分を通過し、大阪教育大前を難なく通過した。誰もが、香里が無事に走れると思ったに違いない。しかし、ここで予期せぬアクシデントが、香里に襲いかかる。
 関屋を通過してすぐ無線が入る。
 「こちら、管制室の北川だ。名古屋行き甲特急16列車聞こえるか?」
 「はい、こちら名古屋行き甲特急16列車運転手美坂香里です、どうぞ。」
 「先に出た青山町行きの急行が、五位堂停車直前でバカ鉄と酔っ払い爺さんの喧嘩が発生した。一応、五位堂停車中に外に追い出したが、その影響で急行が約4分遅れて発車している。まあ、4分程度なら美坂君の実力だったら楽勝だろうね。健闘を祈るよ。じゃあな。」
 「ちょ、ちょっと。何とかしてよ。」
 しかし、無線は切れてしまった。そして、二上を過ぎたあたりから、減速信号が出る。
 「こういう時に、なんでバカ鉄が酔っ払いと喧嘩しなくてはならないのよ。もうっ。」
 こうしている間に、近鉄下田辺りから注意の信号が出る。香里のペースが乱れ始める。五位堂通過直前で減速に回復した。しかし、いつ信号が変わってもおかしくない状況だ。五位堂では、バカ鉄と酔っ払いが駅員に取り押さえられ、注意を受けていた。待避線の準急の運転手も、半ば驚いた様子だった。
 築山を通過しても信号は回復しないままだった。香里のイライラが頂点に達しようとしていた。

 栞は、4号車の水瀬一家の検札をやっていた最中だった。あゆは眠っていたため、秋子さんが栞にきっぷを渡す。
 「栞さん、車掌も大変だね。」
 「まあ、仕事ですから・・・。」
 この頃なら真琴はマンガを読むはずなのに、なぜかおとなしくしていた。そして名雪だが、未だに戻ってこなかった。秋子さんが、
 「栞さん、名雪見ませんでしたか?」
 すると栞が、
 「さっき、喫煙コーナーで会いましたけど・・・。すいません、検札の続きなので失礼します。」
 そして、栞が再び検札を始める。5号車付近で、スピードが遅くなったことに気づいた。なんかおかしい。そう思い、急いで検札をすることに。

 大和高田を通過しても状況は変わらなかった。松塚過ぎても、一箇所だけが進行であとは減速と注意が見えていた。香里が怒り爆発寸前まで来たその時。信号が一気に進行表示に変わった。
 「第3閉塞、進行。」
 香里が叫び、真管を通過。そして、大和八木に差し掛かる。
 「本線場内進行、大和八木通過。」
 待避線には、問題の青山町行き急行が待避していた。時計は16:34。通常より約4分遅れている。なんとか香里は猛チャージをかけようとしていたが、ここである問題が発生した。
 それは、大和朝倉付近の33‰勾配と青山付近の23‰勾配だった。難波へいく時は上りがメインだったため、マスコンは入れたままでよかったが、今度は下りがメインとなるため、行きのようにそう簡単にはいかない。抑速ブレーキを掛けながら下っていかなくてはならない。もし抑速ブレーキを使わなければ、車両の負担もかなりかかってしまう。どうやって乗りきるか香里は考えながらマスコンを捌いていた。
 耳成を通過し、大福を通過した時だった。検札を終えた栞から内線が入る。
 「香里姉さん、五位堂辺りから運転がおかしかったけど何かあったの?」
 すると香里が、
 「栞、先の急行で車内乱闘があってその影響で4分遅れているの。なんかバカ鉄が爺さんに『邪魔だ、どけー』と言ったのがきっかけで喧嘩になったらしいの。」
 「ふぅーん、鉄ちゃんは複雑だね。」
 「だいたいああいう人に限って写真は下手なのよ。」
 確かに、バカ鉄が余計なことをしたため、わずかではあるが遅れている。とにかくダイヤを回復させることが優先だ。とりあえず、大和朝倉付近は通常の速度、新青山トンネルは130キロに近いスピードを出すことで決まった。
 桜井を通過後、テープ放送が流れる。
 「まもなく電波の弱い区間に入ります。ただ今から約40分間、列車電話が使用できなくなりますのでご了承ください。」
 そして、大和朝倉を通過。抑速ブレーキを使いながら下っていく。長谷寺を通過。榛原を通過したとき、ある問題が発生した。
 それは、先行の急行の存在である。一応名張で追い越すダイヤになっているが、遅れが出ているためなんとかしなくてはいけない。そんな時、栞から再び内線が入る。
 「香里姉さん、先の急行には事情を説明したから大丈夫だよ。」
 「ありがとう、栞。」
 これなら名張通過後は先行列車がほとんどないので、遅れ回復に専念できそうだ。室野口大野を通過。三本松を通過し、赤目口を通過し関西圏を抜けた。しかし、ここである人に異変が起きる。

 それは、舞だった。三本松辺りの風景が、あの麦畑とダブるのかどうも様子がおかしい。あの忌まわしい記憶だけは思い出したくない。せっかく普通の女性に戻れたのに、また逆戻りしてしまうのか。そんな時に、佐祐理がフォローする。
 「舞、確かにあの麦畑と似ているけど、もうあの記憶は思い出さなくてもいいのよ。」
 「しかし、あの頃の私が再び甦ろうとしているの。」
 「大丈夫、舞は強くならなくてもいいのよ。あの頃に戻らなくてもいいのよ。佐祐理がついているから安心して。」
 「佐祐理、ありがとう。」
 こうして、舞は何とか無事に済んだみたいだ。舞は22インチディスプレイを見ながら、再びゆっくり休むことに。名張通過直前で、モニターに現在の走行位置が出てきた。

 香里は、もうすぐ名張を通過しようとしていた。そして、
 「本線場内進行、名張通過。」
 タイフォンを鳴らし、名張通過。22インチディスプレイにも、「ただ今、名張付近を通過中です」と表示された。この22インチディスプレイには、ニュースや広告や主要駅の通過情報、そして昼間に限っては走行風景も映し出される優れものだ。これなら、電光掲示板がないアーバンに比べて多少はマシになる。
 香里は、ここから一気に挽回しようとスピードを上げる。近鉄系ベットタウンの桔梗が丘を通過し、美旗も一気に通過する。伊賀の里の最寄駅、伊賀神戸も通過。青山町も通過。この辺りは、かなりひっそりしている。伊賀上津を通過したとき、水瀬一家にも異変が。

 青山町を通過していたとき、真琴がおかしくなった。どうもあの丘が思い出されるのか。名雪が真琴に話し掛けても、あぅーと答えるばかり。そんな時、デラックスカーからあの人が・・・。
 「真琴、展望デッキに行きましょう。」
 なんと、天野だった。真琴が天野に会った途端、悲しそうな表情が消える。
 「どうやら、青山峠とあの伝説の丘がダブっているようですね。その気持ち、よくわかります。」
 そして天野は、真琴を展望デッキに連れて行った。その時、秋子さんが、
 「この子は、この鈴が大好きなの。展望デッキで聞かせてあげて。」
 「わかりました、真琴は私に任せてください。」
 展望デッキについたあと、天野が鈴を鳴らす。真琴がその鈴を気に入っているせいか、天野に寄りかかる。真琴は嬉しそうだった。そして、列車が新青山トンネルに差し掛かったとき、あの記憶が消え去った。
 「あれ、なんでここにいるの?」
 真琴は不思議そうに天野を見つめていたが、どうやらトンネルが景色をかき消したため、元に戻ったみたいだ。これならなんとかなりそうだ。天野は真琴を元に戻し、自分の席に帰っていった。

 列車は、西青山を通過。遅れは、あまり回復していなかった。この先の新青山トンネルで、栞の運転が変わってくる。何とかしたいところだ。
 新青山トンネルで、130キロ近いスピードで一気に坂を下っていく。そして、名古屋からやってきたネクストとすれ違う。香里は、タイフォンを鳴らして挨拶。本来ならもっと先ですれ違うのだが、遅れているためここですれ違うことに。トンネルの中では、キセノンヘッドライト(HIDハロゲンランプ)が鮮やかにレールを照らし出していた。
 トンネルを抜け、東青山を通過し、榊原温泉口を通過する。そして、栞が運転室に入る。
 「香里姉さん、調子はどう?」
 「何とか立ち直ったけど、やはりあの遅れが響いているね。」
 「多少の遅れなら、栞がなんとか挽回するけど・・・。」
 「その時はお願い、栞。」
 列車は、大三を通過し、伊勢石橋、川合高岡を通過した。香里の運転で、なんとか2分遅れまで回復。夜が更けてきた頃、いよいよ中川分岐点に差し掛かる。栞が電気機器の確認をする。そして、
 「場内進行、中川分岐点通過。制限30。」
 香里がハンドルを放し、栞がハンドルを握る。香里が最終チェックを行い、異常がないか確認をする。列車はゆっくりカーブし、名古屋線に進入成功。そして栞が、
 「制限解除。出発進行。」
 栞が、一気にマスコンを入れる。時計は17:13を指していた。桃園を通過し、久居、南が丘を通過した。しかし、栞にしては余裕がある。
 「栞、こんな運転で大丈夫なの?」
 「まあまあ、任せなさい。」
 香里は栞を信じていた。やがて、津新町を通過。いよいよ津に差し掛かる。
 「場内進行、津通過。」
 制限を受け、タイフォンを鳴らして津をゆっくり通過した。駅には活気があったが、ライバルのJRは閑散としていた。快速みえがあっても、まだまだ近鉄が有利そうだ。
 関西線をオーバークロスし、江戸橋を通過した時だった。栞が一気にマスコンを入れる。そして、一気にネクストのパワーを引き出した。高田本山、白塚、豊津上野を猛スピードで通過する。スピードをほとんど落とさずに千里、磯山、鼓ヶ浦を通過。香里が驚く。
 「ちょっと、栞。こんな運転で大丈夫なの?」
 「大丈夫、これくらいではびくともしないわよ。」
 栞は自信満々にネクストを運転する。アーバンの時の栞とは全く別人だ。やがて列車は白子に差し掛かる。
 「本線場内進行、白子通過。」
 タイフォンを鳴らし、駅前のジャ○コを尻目に白子を猛スピードで通過。時計は17:29、遅れが一分を切るところまで回復した。これなら、通常運用に切り替えても大丈夫だ。
 千代崎を通過し、伊勢若松を一気に通過。箕田、長太ノ浦も猛スピードで通過した。遅れはほとんどなくなった。あとは、終着駅名古屋を目指すだけである。キセノンヘッドライトが、名古屋までの鉄路を鮮やかに照らし出す。
運転室を出る直前、香里は、
 「栞、あとは頼んだよ。」
 「了解。」
 そう言って、香里は運転室を出て行った。

 一方、水瀬一家は和気藹々と話していた。あゆも目を覚まし、名雪と話していた。すると、香里がゆっくり歩いていた。名雪が声を掛ける。
 「あれ、香里。いつの間に乗っていたの?」
すると、香里は、
 「難波から、ちゃんと乗っていましたよ。」
と言って、そのまま去っていった。名雪はわけがわからなくなってしまった。とりあえず、自販機で買った紅茶を飲む。すると、秋子さんが、
 「名雪、あゆ、実は香里はさっきまで運転していたんだよ。」
と言った。更に詳しい内容を二人に明かすと、名雪が驚いた表情で、
 「香里が大阪線を運転して、栞が名古屋線を・・・。すごいじゃない。」
 その意見に、あゆがこう答える。
 「でも、二人の息が合わないと難しいね。」
と言った。そして、真琴がこう締めくくる。
 「とにかく、名古屋に無事に着けばいいと思うよ。」
と言った。そしてジュースを買いに行った名雪が、話題を切り替える。
 「さっき喫煙コーナー通ったけど、ひもじい思いをして煙草を吸っているお姉さんを見たよ。煙草を吸う人は、これからはつらい時代だね。」
 秋子さんは、
 「そうだね。でも空気はきれいな方がいいと思うよ。」
 そう話しながら、時間は一気に過ぎていく。

 一方佐祐理と舞は、3号車のデッキでコーヒーを飲んでいた。コーヒー缶には、大阪近鉄バファローズのマスコットキャラクターが描かれていた。佐祐理は、
 「やっぱり、列車の中でのコーヒーはおいしいね。旅はこうでなきゃ。」
 「このコーヒー、ちょっと甘いけどね。」
 そう言いながら、会話がはずんでいく。やがて佐祐理が、
 「これからの列車は、全席禁煙がいいよね。喫煙席があると、タバコの煙が気になるし、髪にヤニがついちゃうから困るんだよね。」
 すると舞は、
 「煙草もどんどん高くなるし、これからはこのようなタイプがスタンダードとなると思うよ。」
 そう言ってコーヒーを飲み終わると、二人は席に戻っていった。そして天野だが、真琴のところで力を使い果たし、ゆりかごシートで爆睡していた。

 列車は楠に差し掛かる。制限50を受け、楠をゆっくり通過。制限解除後、再びスピードを上げ、北楠、塩浜を通過する。定刻に戻ったせいか、栞にも余裕が出てきた。
 香里は、車掌室でメモを見ながら復習していた。一体メモには何が書かれていたのか。
 それは、加速とブレーキの件が細かく書かれていた。アーバンはすべて電動車の為、スピードがダイレクトで跳ね返ってくるがネクストにはそれがほとんどないことや、ブレーキの効き具合等がメモされていた。
 栞は、ほとんどスピードを落とさずに海山道を通過。やがて高架駅の新正を通過し、近鉄四日市に差し掛かる。
 「本線場内進行、近鉄四日市通過。」
 タイフォンを鳴らして、近鉄四日市を通過した。時計は17:38を指していた。列車は右にカーブし、川原町を通過する。阿倉川、霞ヶ浦を通過し、近鉄富田に差し掛かる。制限を受けゆっくり通過する。隣には三岐鉄道の車両が発車を待っていた。
 制限解除後、富洲原、伊勢朝日を一気に通過する。益生手前で減速し、ゆっくり通過する。やがて北勢線の線路をアンダークロスし桑名に差し掛かる。栞が、
 「本線場内進行、桑名通過。」
 タイフォンを鳴らしてゆっくり桑名を通過。時計は17:47を指していた。通過後、ゆっくりカーブし再びスピードを上げる。そして最後の難所、木曽の川越えが待っていた。
 まずは、揖斐川と長良川を一気に通過する。河口堰はすでにライトアップされていた。しかし、そんなことはおかまいなしに川を越え、近鉄長島を通過。そして木曽川を通過する。難なく川を越えた後、近鉄弥富を通過。佐古木を通過し、車両区のある冨吉を通過した。名古屋まであと少しとなった。

 一方、冨吉通過直前で天野が目を覚ました。もうこんな所を走っていたのかと、少々驚いた様子だった。喫煙コーナーで背伸びをして自分の席に戻る。
 佐祐理と舞は、いつもの状態に戻っていた。佐祐理は携帯で遊んでいるし、舞は22インチディスプレイを眺めていた。冨吉で佐祐理が、
 「あと少しで名古屋だね。やっと戻ってきたね。」
 すると舞は、
 「でも、ゲームばっかりしていたように見えるけど・・・。」
 「まあ、気にしない、気にしない。」
 舞は呆れていたが、いつもの佐祐理だから気にはしなかった。

 やがて列車は、近鉄蟹江を通過。戸田、伏屋と一気に通過する。水瀬一家も降りる準備を始めていた。近鉄八田を通過直前に、工事信号で減速する。高架工事が片方しか終っていないため、この辺りをゆっくり通過する。烏森で進行表示板が出て元のスピードに戻す。そして黄金に差し掛かり、テープ放送が流れる。
 「まもなく、名古屋でございます。この列車は、この駅までとなっております。お忘れ物の無いようご注意ください。本日は、近鉄特急アーバンライナーにご乗車くださいましてありがとうございました。」
 そして米野通過直前で、JRセントラルタワーズが姿を現す。米野を通過し、香里がアナウンスする。
 「まもなく、名古屋でございます。この列車は、この駅までとなっております。お忘れ物のないようご注意くださいませ。降り口は右側となっております。本日は、近鉄特急アーバンライナー・ネクストにご乗車くださいましてありがとうございました。」
 そして信号が注意に切り替わる。栞が、
 「場内注意、名古屋停車。」
 信号確認後、列車は地下に潜っていった。そして中継信号が出た途端、運転席にATS30の指示が出る。栞が、
 「中継、停止。」
と言って、じりじりと停止線に近づく。そして、
 「場内停止。」
と言って、列車は停止してしまった。デッキでは、心地よい音楽が流れていた。香里がアナウンスする。
 「信号待ちです。しばらくお待ちください。」
実はこの時間帯は、立て続けに列車が発車するため多少待たされることが多い。すると、急行がゆっくりとすれ違う。急行が去ったあと、信号が切り替わった。栞は、
 「場内注意、名古屋停車。進路4番線、確認よし。」
 再びネクストが動き出す。キセノンヘッドライトを鮮やかに照らしながらタイフォンを鳴らす。そして停止位置にぴったり停まり、18:05定刻通り名古屋停車。栞が、
 「名古屋停車、定着、戸締め滅。」
と言い、そして香里がドアを開けた。大量の客を一気に吐き出す。大半が長旅で疲れきっていた。駅では、
 「名古屋、名古屋です。本日は近鉄特急にご乗車くださいましてありがとうございました。お忘れ物の無いようお降り下さい。4番線の列車は、折り返し18:25発難波行き特急となります。」
 香里と栞が、乗客がいないことを確認し、ドアを閉めた。次の乗務員に連絡事項を伝えて、普通で米野へ折り返す。そして、点呼を行い乗務終了となった。栞は、
 「香里姉さん、どこか食べに行かない。」
と言った。すると、
 「今日は、ゆっくり休ませて。でも、反省会はやるわよ。」
 「はいっ。」
 二人は、こう言いながら戻っていった。長かった2時間近い乗務は終った。

 いかがでしたか。とりあえず、近鉄特急の世界を楽しんでいただければ幸いです。
 なお、アーバンライナー・ネクストは、デビュー後はかなりの人気のようでスタートは上々のようだ。特にデラックスカーは人気が高く、列車によってはデラックスカー満席の便も出ている。ネクスト効果は徐々に出てきているらしく、普通のアーバンをリニューアルしたアーバンライナー・プラスも登場している。
 しかしアーバンライナー・ネクストは、現在2編成しかなく予備車がないため、土曜・休日はほぼフル稼働状態で運転している。そのため、利用客の少ない水曜日を中心に検査を集中させ、検査日はアーバンライナー・プラスを投入して対応に追われている。
 今後は、ネクストが主役になっていくと思うが、時間がかかるためしばらくはアーバンと併用していくであろう。でも、ネクストは今後の近鉄特急の顔であり、標準型として言われるのもそう遠くない。



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